寒い時期になると、感染症予防のためにアルコール消毒をする人が増えますよね。
とはいえ、時期によっては消毒剤が売り切れるケースもあるため「アルコール消毒の代用として、お酒を使えないのかな?」と考える人もいるでしょう。
特に2020年はコロナウイルスが問題になったので、消毒用アルコールやマスクなどの売り切れが相次いでいます。

そこで今回は
- 酒でアルコール消毒したときの効果
- アルコール度数はどれくらい必要か
- 風邪やインフルエンザに効果はあるのか
の3点について紹介します。
目次
市販のお酒は、アルコール消毒の代用になりません
理由①度数が低すぎる

酒も消毒剤もアルコールの一種です。
そのため消毒用アルコールがないとき、代用として「お酒で消毒すればいい」という人がいるようですね。

結論から言えば、市販のお酒ではアルコール消毒の代用にはなりません。
というのも、市販のお酒だとアルコール度数が低すぎて消毒できないのです。
詳しくは3章でお話しますが、消毒用アルコールと焼酎を比較すると濃度の差は約55%。
全然違いますよね?
- アルコール消毒剤:濃度80%前後
- 焼酎:アルコール度数25%
濃度が違うと性質も変わるため、ほとんどの酒は消毒に不向きだと言えます。
理由②成分の問題
お酒によってはアルコール度数80%以上の銘柄もありますが、いずれも日本国内での流通量はごくわずか。
そもそも、飲用なので消毒に適さない成分が含まれているケースもあります。

一部の特殊な酒(2章で紹介します)なら消毒できる可能性はありますが、基本的にお酒は飲むためのもの。
消毒用として使うなら、やむを得ない場合のみにしましょう。
アルコール消毒には、度数70~83%が必要
厚生労働省はアルコール度数70~83%を推奨

厚生労働省の特例(2020年4月13日発表)によると、アルコール濃度が70%から83%の酒なら消毒液の代わりとして使用して良いとの事。
以下、NHKニュースからの引用文です。
やむをえない場合にかぎり、酒造メーカーがつくるアルコール濃度が高い酒を消毒液の代わりとして使用することを特例として認めることを決め、全国の医療機関などに通知しました。
具体的には、アルコール濃度が70%から83%の酒を対象とし、これより濃度が高い酒は、殺菌効果が落ちるため薄めて使うよう求めています。
引用元:https://bit.ly/34BnQJn

ただし、これはあくまで特例。
できれば酒でなく、市販の消毒液を使用するのが望ましいです。
厚生労働省も「やむを得ない場合に限り」と説明しているので、できるだけ市販のものを使用してくださいね。

60~95%でもアルコール消毒は可能
厚生労働省は「アルコール濃度が70%から83%の酒なら消毒の代用にして良い」と説明していますが、実際にはアルコール度数60%でも殺菌・消毒できます。
70%エタノールがもっとも強い殺菌・消毒力をもつと言われてきましたが, 現在では60~95%の濃度範囲であればその殺菌・消毒力にはほとんど差がないと言われています。
引用元:http://www.jarmam.gr.jp/situmon/alcohol_noudo.html

ただし、薬局に並んでいる消毒用アルコールの濃度は76.9%~81.4%。
規定により、どの製品もこの範囲で調整されています。
となると、やはり酒で代用するなら厚生労働省の示した70~83%を目安にするのがベターでしょう。
ビールや日本酒はNG!度数が低すぎます

私たちが普段飲んでいるお酒は、ウイスキーなど強めのものでも度数40%ほど。
ビールは濃度5%しかありません。
つまり、ほとんどの酒はアルコール消毒に不向きなのです。
下記の「アルコール度数一覧」を見てわかるとおり、飲料用でアルコール度数が60%を超える製品はほとんどありません。
お酒の種類 | 度数 |
---|---|
ウォッカ | 40%~ |
焼酎 | 25% |
スピリタス | 96% |
ビール | 5% |
日本酒 | 15% |
ワイン | 14% |
シャンパン | 12% |
ウイスキー | 40% |

ただしスピリタス(ポーランドが原産地のウォッカ)は濃度96%なので、少し薄めれば消毒効果が期待できるでしょう。
高濃度の酒については下の記事にまとめたので、参考にしてみてください。
スピリタスは成分のほとんどが純粋なアルコールなので、ある程度なら消毒できる可能性があります。
ただし、アルコール協会は非推奨

『J-CASTニュース』で掲載された記事によると、アルコール協会は「スピリタスには一定の消毒効果が見込めるものの、推奨はできない」との見解を示しています。
消毒効果はあるものの、市販の消毒液と同レベルの効果があるかは保証できないとの事です(以下、記事本文の引用を掲載)
エチルアルコール(エタノール)などの普及・研究等に従事する一般社団法人アルコール協会に見解を聞くと、一定の消毒効果は見込めるが、推奨はできないという旨の回答だった。
日本で厚労省が定める医薬品の基準「日本薬局方」では、消毒用エタノールの濃度は76.9%から81.4%の間と定められている。酒類に含まれるアルコールと消毒用のエタノールの化学組成は全く同じなため、消毒効果はあると説明している。
引用元:https://www.j-cast.com/2020/02/25380524.html?p=all

もし酒でのアルコール消毒が不安なら、無水エタノールで代用する方法を試してもいいでしょう。
消毒用アルコール(消毒用エタノール)の代用になるものは下の記事にまとめたので、参考になれば嬉しいです。
飲酒しても風邪やインフルエンザに効果はない

お酒にまつわる俗説は様々。
中年のおじさんだと「酒を飲めば、体内をアルコール消毒できる」「酒を飲めば風邪が治る」なんて怪しげな持論を掲げる人もいますが…
お酒を飲んだところで、体内の菌・ウイルスは撃退できません。
2章で説明したとおり、消毒するためにはアルコール濃度が60~95%ほど必要。これは飲酒用のお酒よりもずっと高濃度です。

以下は『産経WEST』にて紹介されていた医師のインタビューですが、やはり飲酒で風邪や菌を撃退するのは現実味がないと説明しています(以下引用)
「一般的に医師が消毒で用いるアルコール(エタノール)は濃度が70%ほどの物です。これはこの濃度のアルコールの殺菌効果が最も高いからです。対して飲酒に用いるアルコールのほとんどは、ここまで高濃度ではありません。更に唾液と混ざって濃度が低下することと、一瞬で患部を超えて食道・胃に流れてしまうことも考えると有効性は低いです」(坂本先生)
では、「サバや牡蠣など、“当たりやすい”と俗に言われる海産物を食べる際、お酒を一緒に飲めば殺菌される」という話についてはどうだろうか。
「食中毒の原因としてアニサキスやノロウイルスが代表的なものとして挙げられますが、これらはアルコールでは殺菌されにくいことが知られています。医療用アルコールでも殺菌しにくいのに、飲酒用アルコールでは無意味だといえます」(坂本先生)
引用元:https://bit.ly/2SJ80bq
アルコール消毒液による手指・日用品の消毒はインフルエンザやコロナウイルスに有効です。
しかし、以上の理由から飲酒で体内を消毒するのは難しいと思われます。
まとめ
- アルコール消毒するには濃度60~95%が適切
- 消毒効果に適さない成分が含まれたお酒もある
- 市販のお酒はアルコール濃度が低いため、消毒用として不向き
- ウイスキーや焼酎も、消毒用アルコールに比べれば濃度は低い
- スピリタスなら高濃度なので効果が期待できる
- ただしアルコール協会はスピリタスについて「一定の効果はあるが非推奨」との事
スピリタスのような特殊な酒でない限り、消毒剤としての効果は低いかと思われます。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。